「スープ豚」
日本でも本の挿絵やポストカードなどで知られるようになったミヒャエル・ゾーヴァ。
その彼のイラスト原画やタブロー、また映画やオペラに使用された作品が百点以上も一堂に会する
またとない機会が訪れた。
イラストの注文が殺到する以前の八十年代、ゾーヴァが描いていたタブローは、どれも、
思わず足を止めて「ナンダ、コレハ?」と見入ってしまうような作品ばかりだ。「スープ豚」もそのひとつ。
白いテーブルクロスの上にきちんとおかれた銀のスプーン、糊のきいたナプキン、水の入ったグラス。
それは写実的で、まるで古典の絵画かと思うほどのまじめさで描かれている。
が、茶色のスープのなかに笑みを浮かべて浸っているのは一頭の豚。スープの汁がまわりに飛び散り、
すべては台無しだ。それは、見る側の足元をすとんとすくうようなギャップ感を抱かせる。
まじめ? それともジョーク? このスープは美味な高級料理なのか、単に汚い泥水なのか。
当店(展)おすすめの一品、ぜひお試しを…! 【 本文掲載:2005年6月14日付 読売新聞 京都版 】
© Michael Sowa
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