「ちいさなちいさな王様」
 
 ミヒャエル・ゾーヴァが挿絵を手がけた本「ちいさなちいさな王様」は、 現実的なタッチで非現実の世界を描くのが得意な彼にとって、まさにぴったりの物語だった。
 一人暮らしのサラリーマンである「僕」のところへ現れた親指ほどの小さな王様。 この王様は、鋭く洞察に満ちたことをいうくせに、気短かでいばっていて子どもっぽい。 朝食中、外出したいといってかんしゃくを起こし、杖でバターを穴だらけにしたり、 角砂糖を次々とコーヒーに投げ入れたり。「僕」はしかたなく、王様を胸ポケットに入れて出かけることにするが…。
 絵が気に入らないといつまでも上塗りと修正を重ね、なかなか締め切りを守らないと出版界では有名なゾーヴァ。 本の制作スタッフがゾーヴァ宅に泊まりこんでこれらのイラストの完成を待ったというが、その甲斐は充分にあっただろう。 アトリエで誕生した童顔で太った王様は、ストーリーと見事にマッチし、絵の中から飛び出してきそうなほど 存在感たっぷりだ。
                  【 本文掲載:2005年6月15日付 読売新聞 京都版 】

© Michael Sowa
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